朝日カルチャーセンター「カフェきごさい吟行句会」五月
新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。五月は数年ぶりに「新宿御苑」での吟行句会を行いました。初夏の爆発するような緑のなか、泰山木、薔薇の花に出会いました。
【特選】
とりどりの薔薇と競つて花帽子 勇美
イギリスの競馬場の一場面のよう。薔薇の花の間を浮き沈みしながら行く花帽子が見えるようです。原句は「とりどりの薔薇と競ひて花帽子」。
蛇の衣のこして父は逝きたまふ 勇美
箪笥に入れておくと服にこまらない、財布に入れておくとお金が貯まると言われる蛇の衣(抜け殻)。遺品整理の折でしょうか、父上が仕舞っておいた蛇の衣が。身近にいる人でも、実はその思いはよくわからないもの。「蛇の衣」という少し不気味な存在感が活きた一句です。原句は「蛇の衣のこして父の逝きたまふ」。吟行の折、高い木にぶらさがる蛇の衣を見つけました。
【入選】
ひとときの風を楽しみ黒揚羽 和子
夏の蝶、黒揚羽ならではの堂々とした存在感。
ご長寿が木陰で昼のビールかな 勇美
美味しそうなビールですが、上から下まで散文のように述べてしまったのが残念。「木の陰で昼のビールや寿」など。
新緑や今が一番いい二人 裕子
若い恋人同士でしょうか。老婆心ながらというところですが、目に染みるような新緑に託す思いが感じられます。原句は「新緑よ今が一番いい二人」。
目を閉じて若葉のうねり海に似て 裕子
初夏の緑に身をまかせる作者。思いが句に収まりきっていないのが残念。「目を閉じて若葉のうねる海のなか」など。
ビー玉の中に逆さの虹かかる 勇美
ビー玉の中の光は句材として新しくはありませんが、情景をしっかり言葉で表現できています。原句は「ビー玉の中に逆さの夏の虹」。この句の場合は、夏の季語にあえて夏はいりません。
風の色仄かに見ゆる蛇の衣 和子
「風の色」で切れるのか、「仄かに見ゆる」で切れるのかが曖昧。仄かに見えるのが風の色なのか、蛇の衣なのかをしっかり描きましょう。
泰山木ここにありとぞ花開く 和子
泰山木の大きな花が空で見得を切っているようです。泰山木ならではの一句。
松の芯ドコモタワーを遠景に 勇美
新宿御苑の森の向こうに、松の芯のように尖るドコモタワー。
蛇いちご遠いむかしの帰り道 光枝